電力需給に関する検討会合であいさつする松野博一官房長官
(左から3人目)=6月7日、首相官邸(矢島康弘撮影)
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今夏の電力需給が全国的に逼迫(ひっぱく)する懸念が強まり、政府は7~9月に7年ぶりの節電要請を行うことを決めた。
原発再稼働の大幅な遅れに加え、老朽火力発電所の廃止が加速し、電力供給力が大きく低下している。このため広く国民に節電を求めて電力需要を抑制し、大規模停電の発生を防ぐことが狙いだ。
今年3月には東日本で電力需給逼迫警報が初めて発令され、大規模停電の寸前まで陥った。
これを踏まえて家庭や企業に早めに需給逼迫を知らせて節電を促す「注意報」を新設する。休止中の火力発電所を一部再稼働させるなどの供給力対策も講じるが、来年の初頭には、東京電力管内を中心に全国で今夏以上に深刻な電力不足が見込まれている。
もはや節電頼みは限界だ。供給力の強化に向け、安全性を確認した原発の再稼働が急務である。
電力を安定的に供給するには、供給力の余裕度を示す予備率が最低限3%は必要とされる。だが政府によると、7月が猛暑だった場合、東北、東京、中部の各電力管内では予備率が3・1%にまで落ち込むとされている。
北海道・沖縄を除くその他の地域も、予備率は3・8%にとどまる見通しだ。このため政府は、5年ぶりに電力需給に関する関係閣僚会議を開き、企業や家庭に数値目標のない節電を求めることにした。利用者は無理のない範囲で上手な節電に努める必要がある。
さらに政府は、地域を区切って電力供給を止める「計画停電」の準備も求める方針だ。
だが計画停電は、生活だけでなく、工場の操業や商店の営業などにも大きな影響を与える。政府と電力会社は計画停電を回避するため、全力で供給力の増強に取り組まなくてはならない。
来年1~2月には東電管内の予備率がマイナスに落ち込み、多くの地域で3%を下回る見通しだという。政府は電力需給が極めて危機的な状況にあると認識し、安全審査の効率化で原発の早期再稼働などの対策を講じるべきだ。
自家発電からの買い取りなども進めたい。
電力需給の逼迫は、政府の電力自由化や脱炭素政策の影響も見過ごせない。太陽光発電の導入ばかりに注力し、安定電源の確保を怠ったツケが回っている。制度設計の見直しも急ぐべきである。
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2022年6月9日付産経新聞【主張】を転載しています